
2015.11.15
【怜主】散歩
――うららかな昼下がり。
そんな平凡な形容が何より似合う散歩日和に、ぶらりと河辺の並木道へと赴いた。
暇さえあれば書くなり読むなりしているおれに散歩なんていう趣味はなかったが、
やたらと続けて押しかけてくる母様の見舞い客に首と腰を折るだけの人形役も、
どうでもいい世俗の話を延々と聞き続けるのもそろそろ御免だと思っていた矢先、
丁度良く往診にやってきたお医者の娘御を連れて。
やづきひより個人が運営する趣味のごった煮サイトです
本日は「ホワイトデイ」。
一月前のバレンタインデイに女性から贈り物を頂いた男が、お返しをする日だそうです。
……大正時代にはまだない?
そうですか、それは存じませんでした。
……オーナーから何ももらってない?
いえ、私は日々沢山のものをオーナーから頂いております。
昨日も書類整理の雑務をお手伝いさせてくださいました。
そういう訳で、本日はこの不二、心を込めてオーナーに贈り物をしなければならないのです。
◆
「ちょっと……俺が先にオーナー室に来てたんだから、大人しく表で待ってなよ!」
「何を言う、オレとほぼ同時に辿り着いた癖に」
「ぎゃあぎゃあ喧しいな、二人とも入らないなら僕が行くから早くそこをどいてくれ」
夜の公演が終わり、オーナー室へと足を運ぶと
どうやら扉の前に他のスタア達が集まっているようです。
「皆さん、オーナーに御用事ですか?」
「なんだ、不二も来たのか」
声をかけると、若干呆れたような口調で聖四朗に溜息を吐かれる。
貴方に呆れられる謂れはないと思うのですが。
「べっ……別に、俺は用事ってほどじゃないけど」
「ならさっさとそこを譲ってくれないか。この後も色々と段取りがあるんでね」
色々と、に含みを持たせた勲が脇に抱えている薄い箱は
華族のご婦人に人気の神戸の銘柄……恐らく洋服でしょうか。
オーナーには和服がお似合いですし、彼もそう言っていたような気がするのですが。
「私もオーナーに用事があります。そこをどいて頂けませんか」
至極当然の申し出をしたというのに、三者揃って信じられないという顔を向けてくる。
これは、一体どういう状況なのでしょうか。
「不二。お前、この場面で状況がどういうことかわかっていないのか?」
「どう、と言われましても……」
三人ともオーナーに用事がありオーナー室の前まで来ている。
にも関わらず扉の前で悶着し、しかし参邇に至ってはすぐに終わる用事だと言っていた。
「四人一緒に入るというのはどうでしょうか」
「ああ、もうそれでいいな。僕が先に行こう」
「そんなこと言って、どうせすぐ鍵閉めるつもりなんでしょ。この色情魔!」
「待て。ここは普通に考えて壱番星、弐番星、順番に行くのが妥当じゃないか」
篤実な提案だと思ったのですが、これも駄目なようです。
聖四朗、それは越権行為と思われます。
「おや……お前たち、まだ帰ってなかったのかい」
あれこれと言い合っていると、不意にのんびりした声が後ろからかかり、
振り向けば案の定。
「また増えた……」
「おい貴様、またカアテンコオルに居なかっただろう?どこに行っていた」
「まあまあ、いいじゃないか。コースチャはもう死んでしまったのだし……ところで」
心底不思議そうに此方を見回す反射の向こう側が、一瞬楽しげに見えたのは気のせいだろうか。
「全員揃ってオーナーに用かい?あいつなら先刻おれが家に送り届けたよ」
「はあ!?」
「体調不良というほどではないけれど、学業もあるからね。あとの業務はまた明日、ということで」
お前達も帰りなさい。とひらり背を向けて手を振る伍番星に唖然とする一同。
ガラガラと、何かが崩れる音がする。
(今日、お渡しできなかった……)
包んだのは、南蛮から取り寄せた珍しい焼き菓子。
使用人に聞いて若いご婦人に人気だというものを選定したのですが
どうやら無駄足になってしまいました。
「きょ、今日じゃなくたっていいし……」
はっと顔を上げると、憎々しげに吐き捨てた参邇の手にも愛らしい小包が見える。
「そうだな。こういうのは気持ちが大事だ」
「仕方ないな、出直すとするか。」
各々が想いを胸にばらばらと引き返していく。
(今日じゃなくても)
ぐっと決意を新たに、思い直す。
そうです、今日じゃなくても、日頃の感謝を改めてオーナーに伝えましょう。
翌日の終演後、また同じやりとりが繰り返されることを確信しつつ――
今日のところは帰路に着いたのでした。
2015.11.15
【怜主】散歩
――うららかな昼下がり。
そんな平凡な形容が何より似合う散歩日和に、ぶらりと河辺の並木道へと赴いた。
暇さえあれば書くなり読むなりしているおれに散歩なんていう趣味はなかったが、
やたらと続けて押しかけてくる母様の見舞い客に首と腰を折るだけの人形役も、
どうでもいい世俗の話を延々と聞き続けるのもそろそろ御免だと思っていた矢先、
丁度良く往診にやってきたお医者の娘御を連れて。
2015.11.14
帝スタろぐ(n回目)
キネマト感想書こう書こうと思いつつこのままフェードアウトしそうなスパン具合ですが
白状すると四番星まだ聞けてません……
(聞いたらシリーズ終わっちゃうの寂しい系の心情)(特典は聞いた)